『原子・原子核・原子力~わたしが講義で伝えたかったこと~』(著:山本義隆)を読んだ感想を知りたい。
こういった疑問に答えます。
この記事を書いている私は、30代の都内でJTCで働く社会人 です。意を決して再受験に挑戦しています。
本記事の内容
この記事を書いている私は、30代の社会人(都内のJTC勤務)です。意を決して再受験に挑戦しています。
こういった私が、解説していきます。
私が実際に勉強に使っている参考書や問題集の感想、受験した模試の感想などを書いています。
記事の信頼性担保に繋がると思います。
『原子・原子核・原子力~わたしが講義で伝えたかったこと~』(著:山本義隆)を読んだ感想
駿台の物理科の山本義隆 師の著書『原子・原子核・原子力~わたしが講義で伝えたかったこと~』を読みました。
原子・原子核・原子力: わたしが講義で伝えたかったこと (岩波現代文庫 学術 455) |
福島の原発事故後,「α線」「セシウム」といった言葉が日常に入り込んでいる.
一人ひとりが避けて通れない問題をなおかかえる現在,自分でものごとを判断するために,科学者の発見や研究の歴史に関するさまざまな話題をまじえ,原子・原子核について基礎からやさしく解説する物理学の入門書.■著者からのメッセージ
別段,原子や原子核について知らなければ知らないでいいのかとも思われますが,やはり福島の原発事故があって,放射性物質が撒き散らかされ,「α線」だとか「セシウム」とか,そういう言葉が新聞に溢れて,はっきりいって,日常的な生活にそういう言葉が入ってしまっているわけです.それはもはや一人ひとりにとって避けて通れないことなのです.だから,自分でものごとを判断するために,最低限は知っていなければならないということなのです.
世の中にはいろんな問題があります.人類のこれまでの歴史で,結局世の中の仕組みとして,一番良さそうな仕組みは,民主主義ということになりました.……だけど民主主義というのはけっこう大変で,「誰かにお任せ」では済まないことがあります.ときには自分の頭で考えて判断することが迫られるわけです.……事柄によっては,専門家と自称している人たちに任せておけばとんでもない結末になることもあるということは,今回の原発事故でよくわかりました.結局,勉強する目的は何かというと,いろんな問題について,自分で考えて,自分の言葉で意見を言うことができるようにするためなのです.
(「はじめに」・「あとがき」より)■内容紹介
原子・原子核について基礎から学び,原子力について理解を深めるために,科学者の発見や研究の発展を歴史的にたどりながら,ていねいに解説する,物理学の入門書.
福島原発の事故以来,後の世代にとてつもなく大きな負債をつくってしまった我々に何ができるか,問い続けてきた著者が,2013年に駿台予備学校千葉校で行なった記念講演(開校20周年,ボーア原子模型100周年)に基づくもので,やさしい語り口で記されている.
岩波書店:原子・原子核・原子力
もくじ
- 第1章 原子論のはじまり
- 1.1 化学原子論
- 1.2 歴史的な語りについて
- 1.3 力学のおさらい
- 1.4 気体分子運論
- 第2章 イオンと電子の発見
- 2.1 重力をめぐって
- 2.2 電磁気学の初歩
- 2.3 電気分解の法則
- 2.4 電子の発見
- 第3章 X線と放射線の発見
- 3.1 レントゲンとX線の発見
- 3.2 ベクレルとキュリー夫妻
- 3.3 放射線をめぐって
- 3.4 放射線の人体への影響
- 第4章 アインシュタインと光子仮説
- 4.1 光電効果をめぐって
- 4.2 放射線のエネルギー
- 4.3 光子の波動性と粒子性
- 4.4 アインシュタインについて
- 第5章 原子モデルをめぐって
- 5.1 有核原子
- 5.2 原子の古典モデルとその問題点
- 5.3 ボーアの原子モデル
- 5.4 一般の原子について
- 5.5 モーズリーの悲劇
- 第6章 原子核について
- 6.1 放射性元素の崩壊
- 6.2 核物理学のはじまり
- 6.3 核力と核エネルギー
- 6.4 核分裂と連鎖反応の発見
- 第7章 原爆と原発
- 7.1 原子爆弾について
- 7.2 原発の事故について
- 7.3 使用済み核燃料の問題
- 7.4 原発と環境汚染・被曝労働
- 7.5 放射線の危険について
駿台の物理科の山本義隆 師
駿台の物理科の山本義隆 師といえば、『新・物理入門』ですね。
私は、浪人生時代は、駿台名古屋校に通っていたのですが、名古屋校は関西物理科のエリアなので、物理は新田克己 師の授業を受けていました。
当時も参考書は、『新・物理入門』を使っていて、山本義隆 師の授業もいつか受けてみたいなあ、と思っていました。
その山本義隆 師が、2013年に駿台千葉校での記念公演で高校生向けに行った授業が書籍化されたのが本書です。
高校生向け、なので授業のような語り口調がそのまま本になっていて、
読みやすく、夢中になって1日で読んでしまいました。
内容は、ラボアジェの質量保存則、ニュートンの運動方程式といった、古典的な化学、物理から始まり、高校物理の範囲での前期量子論の成り立ち、そして原子力発電の問題点、
を分かりやすい言葉と数式で説明されています。
文章だけでなく、図と数式とで書かれているので、
物理の受験勉強を普段やっている受験生なら、興味を持って読める形になっています。
ラボアジェ、ニュートン、ファラデーからボーア、アインシュタインへとつながる物理学史
ニュートンの運動方程式、古典力学から順番に物理学史をたどる
ニュートン、ファラデーといった昔の物理学者たちも順番に登場します。
物理学者たちの当時の研究の様子が伝わってくる
物理学者たちの肖像の書かれた切手が随所に登場し、当時の物理学者たちの研究の様子が伝わってきて、
物理学史をすこしだけ知ることができます。
古典力学では説明ができなかった現象を、ソルベー会議に集まっていたような当時の物理学者たちがどう考えて、
前期量子論を作っていったのかが、高校生にも分かる言葉で書かれていて、たいへん興味深い。
20世紀物理学の原罪
原子爆弾、原子力発電をこの世に生み出してしまった物理学者たち
このように当時の物理学者の多くが原爆性能になんらかの形でかかわっています.私には,原爆と原発が20世紀物理学の原罪のように思われます.
物理が生み出してしまった人類の課題をきちんと認識するために、
やはり私たちは何歳になっても物理を正しく勉強しないと、と思うのです。
文系頭の精神論でなく数式と計算で現実を語る
原発反対の精神論での文章ではなく、何がどう問題なのかを、数式と計算によって物理学的に説明されています。
大学入試問題との関連も
『新・物理入門』の、あのページの文章についてのコメントも
『新・物理入門』の最後のページには、以下のような文章が書かれています。
高校生の読む受験参考書にしては、非常に印象に残る、強いメッセージを感じる文章だと思います。
新・物理入門 <増補改訂版> (駿台受験シリーズ) |
『原子・原子核・原子力』の中でも、『新・物理入門』の最後のページについて、師が込めた思いが書かれていました。
あとがきに、JUKEN7の笠原師の名前も
当時、まだ駿台で教えていた、JUKEN7の笠原師の名前も、あとがきにありました。
「自然科学をもう一度、きちんと学びなおしたい」という再受験の動機を再確認
社会人再受験に挑戦しようと思った動機である、「自然科学をもう一度、きちんと学びなおしたい」という気持ちが、本書のあとがきを読んで、より一層強くなりました。。
この日本のような国で生活する一人として、物理をきちんと勉強しなくては、と思います。
原発の新設も話題に上る昨今ですが、2011年の東京電力福島第一原発事故のことを忘れてはいけないのではないでしょうか。山本義隆『原子・原子核・原子力』は #原子力の日 の今日、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。https://t.co/SC3EZi4Sgf pic.twitter.com/VleYTJnmZ6
— 岩波現代文庫編集部 (@iwanami_genbun) 2022年10月26日
『ボーアとアインシュタインに量子を読む』
2022年9月に発売された、山本義隆 師の『ボーアとアインシュタインに量子を読む』も、時間を見つけて読んでみたいと思います。
ボーアとアインシュタインに量子を読む―― 量子物理学の原理をめぐって |